
緑内障
なんでもないところにぶつかったり、つまずいたりする。何かを探すとき近くのものを見落とす。新聞の文字や行を飛ばして読んでしまう。記事を探すように新聞を動かす。裁縫の針に糸を通しずらい。物干しで頭を打つ。車の運転中、センターラインを越えたり、道路の縁のコンクリートに乗り上げたり、あるはずの信号機が見えない。スポーツをしているときボールを見失う。
これらの症状があれば視野がかなり欠けているおそれがあります。思い当たるひとは一度眼科受診することをお勧めします。中期以上に進行した緑内障かもしれません。
緑内障では多くの場合、視野異常が非常にゆっくり進行するため視野が狭くなってきてもなかなか気づかずに異変を見過ごしてしまうために多くの人が病気の進行を放置してしまいます。視力はかなり末期になるまで保たれますので目はよく見えるから大丈夫と安心することはできません。初期の視野異常は視界の一部がぼんやりするだけなのと片方の目がおぎなうので視野に障害があっても全く自覚しないことがほとんどです。
日本緑内障学会が岐阜県多治見市で40歳以上の人を対象に行った調査では、ほぼ17人に1人が緑内障であり、年齢が高くなるほど有病率が高いという結果を得ています。
眼球の中は不透明な血液の代わりに眼球の中で作られる透明な房水が循環しており、房水の眼外への排出がなんらかの原因で障害されると眼圧が上がり、視神経乳頭を圧迫して神経線維が断線を起こして網膜で受けた光の情報が脳に伝わらずに視野障害がおこります。根が傷むと木の枝が少しずつ枯れるように、緑内障を放置すれば長期間かけて神経線維がゆっくり断線していきます。視神経乳頭は構造上眼圧の影響を受けやすく、その強度は個人差が大きい。視神経のもろい人は低い眼圧でもダメージを受けてしまいます。調査では眼圧が統計学的な正常値であるにもかかわらず緑内障と診断された人が3分の2を占めたそうです。日本国内で潜在患者数を含めて400万人ともいわれ、緑内障はありふれた目の病気だといえます。
血行不良も緑内障と関係することがあります。血液の流れが悪いと神経に十分な栄養が行き届かない。糖尿病、高血圧症は危険因子にあげられておりますので生活習慣病の予防、老化の防止が大切です。
緑内障の多くは、慢性的に視野障害が進行する開放隅角緑内障ですが、その他に房水流出障害の機序が異なる閉塞隅角緑内障があり、急性閉塞隅角緑内障は、ほとんど何の前触れもなく急激に眼圧が上昇して、強い眼痛・充血・目のかすみのほか、激しい頭痛や吐き気を自覚し、そのまま適切な治療を受けないで我慢をしていると1〜3日くらいで光を感じなくなってしまいます。治療を行っても重大な障害を残すことがあります。閉塞隅角緑内障は60歳以上で遠視の女性に多く、レーザー治療または手術により術後は安定します。
開放隅角緑内障では原則薬物治療ですが、効果が不十分な場合は手術を勧められます。手術は複数回行うことがあります。薬物治療も手術もこれ以上病気を進行させないために行うもので、一度失ってしまった視野は残念ながら回復することができません。早期発見が重要です。
企業の検診で異常を指摘されることがあります。市町村が行う健康診査の際に眼底検査も希望しましょう。
副腎皮質ホルモンは眼圧が上昇する人がおります。ステロイドの入った点眼液を長期に使っている人、またステロイド剤の内服、点鼻薬を使っている人は緑内障のチェックが必要です。
閉塞隅角緑内障では、「緑内障のひとは医師と相談するように」と注意書きのある薬、市販の点眼薬に含まれるオキシメタゾリン、テトラフドロゾリン、ナファゾリン等は眼圧を上昇させる可能性があります。
テレビの健康番組、今年も目の愛護デーに合わせて10月9日より「中高年の目の悩み」が放映される予定です。また、ウエブページで目の病気に関する情報を見たい人は、日本眼科医会(http://www.gankaikai.or.jp)、日本眼科学会(http://www.nichigan.or.jp/public/disease.jsp)のほかに点眼液の製薬メーカーのサイトなどで視野の簡易チェック方法が提供されているのもあります。
(三重県眼科医会副会長 森 正宏 記)
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